▼ポストカード\150
(仏印刷/米オリジナルポスター図柄)
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何度でも言う、しつこく言う。スクリーンで見たかった。いや、看取りたかった。
正直な感想として、劇場公開してヒットするかと問われたら”難しい”と言うのも分かる。
ウエスタン物のセオリーの予備知識のない日本の子供達には分からない事が多いかも知れない。複雑な作風の日本のアニメに慣れた大人にはシンプルすぎる本作は「所詮、子供向け」と判断されてしまいそうな作品でもある。
でも、ひいき目をさっ引いても、素直にエンターテイメントしていて面白かった。

76分と言うライトな尺のおかげも手伝って、もう4、5回見返しました。回数を経て発見がある、味が出てくる部分もあって、なかなか侮れない良作です。(…そのヒマがあったら仕事しろよ、の声が聞こえて来る。)
■納屋から巣立ったネズミは納屋へ回帰したのか
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に限らずシリーズ物のラストは”原点回帰”がテーマになりやすい。
アメリカ人の原点はやはり開拓者となるのか、西部劇を扱ったこの作品は興味をそそる
しかし本作のポジションは偶発的。2Dスタジオの閉鎖が決定されたときには3本ほどの作品の中止が発表された。決して、2Dアニメの最終作として企画された訳ではない。(公式発表以外にも動いていた作品があったと当時聞かされ残念だった。)

作られたディズニー伝説であることは重々承知で、決まり文句である「全ては一匹のネズミから始まった」のフレーズが頭をかすめる。納屋から飛び出した一匹のネズミは、あたかも納屋に帰り着いたようにも感じる。

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■強い女性の最後はおばちゃん牛
ディズニー作品の多くは強い女性が登場する。『シンデレラ』は逆境にも明るく振る舞い、自分の力でがんばり通す強さを持っている。戦後のプリンセスたちがシンデレラを基本に”強い女性”なのは、いかにもアメリカ的だ。
世代が変わっていってもジェンダー的な障害は同じで90年代にも逸話が生まれた。
『美女と野獣』製作中、女性脚本家リンダ・ウールバートンが目を離すと製作現場のスタッフがベルを泣いてばかりいる女性にしてしまうのを何度も制止した。
気丈な性格に仕立て上げたのは現場の女性だった。

ミッキー・マウスを例に出すまでもなく、小さい者、弱い者が活躍する物語は胸がすく。ディズニー作品の女性はウーマンリブを声高に叫ぶわけではないが、社会的な弱者へのエールと言う側面も多く登場する。戦時中の権力に迎合する姿とは180度の大転換にも見えるが作品は素直に楽しみたい。

プリンセスものを離れ、『ホーム・オン・ザ・レンジ』の主役はオバタリアンの牛。
自分たちの農場を救う為に立ち上がる彼女たちは強い。
まだまだ現実世界では男女同権とは思えないが、男が弱くなった今の世の中、強いプリンセスは必要ないのかも知れない。
(ディズニープリンセスは現在でももてはやされているが、現在の扱われ方は”お姫様”と言う記号でしかなく本来のものとはかけ離れていると言うのが私見である。)

強さに開き直りすら感じられるおばちゃん牛たちの活躍は楽しい。バラバラな個性が旅を通して理解し合っていく、そして自分を発見する構成はロードムービーとして王道だ。
お姫様とはほど遠い雌牛たちの幸せは結婚だけではない。ディズニー的なハッピーエンドで描かれる要素はいつも通りの”ウェディング”なムードも流れるが、本作ではギャグとなっている。
彼女たちの帰結点は土地であり種族を越えた家族なのだ。

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■最後を飾るアラン・メンケンの楽曲
王道のミュージカル路線をディズニーアニメの中に復活させた立役者アラン・メンケン。コンスタントに作品を発表していた印象がある90年代。そして沈黙するかのようにディズニー作品から姿を消す90年代後半~00年代。
久々に登場したメンケン作品『ホーム・オン・ザ・レンジ』のサントラは90年代のような”王道ミュージカル”調とは打って変わって地味だ。楽曲の中で一番活躍するのが悪役と言うのも意味深。

■魅力的なコミカル悪役”アラメダ・スリム”
歌って踊れる魅力的な悪役、”アラメダ・スリム”は際だったキャラクターに仕上がっている。牛を盗む手段が漫画的なのも面白いし、何よりもバイタリティあふれ、飛び回る。ある意味、主役たちの活躍を食ってるとすら言える。おそらく多くの人が繰り返し見たくなるチャプターはアラメダ・スリムのミュージカルナンバーだろう。それくらいおいしいところをさらってるキャラクターだ。
声はデニス・クエイド。

■ディズニー十八番・動物もの
ディズニーといえば動物ものが十八番。異論を唱える人はいないでしょう。動物キャラクターたちがメインと聞くだけで子度向きの印象が強くなってしまうのは否めないが、裏を返せば明るく分かりやすい明朗な作品になりやすい要素。
漫画的で楽しい空間を伝えるこの作品では最大限に機能している。

■勝利の雄叫び
ピーターパンは時折、勝利を誇示するかのように鶏の鳴きまねをする。この作品の中では正に”鶏になる素質が充分なキャラクター”が「コケコッコー!」と叫ぶ訳だけど、そのキャラクターはスパイスのようにハッとさせる。
牝牛3匹の旅に乗り気でなかったグレイスの心変わりを催し、牧場主マギーはクライマックスに身をひるがえしてそのキャラクターを救おうとする。観客からため息が漏れたとスタッフが語るのも彼らが一番悲惨な姿を晒す瞬間だったとコメンタリーで言っている。
次世代を象徴する彼らだからこそ、大切だと思える。
だからラストシーンの鳴き声は「勝利の雄たけび」に聞こえる。もちろん物語の中では取り戻した楽園農場を祝う声であるが、目線を引くとそれ以上のものに聞こえてくる。

自分の意見は感傷的すぎるかもしれない。でもあの雄たけびは、2Dアニメが死んだといわれる中で制作費やスケジュールと戦いながら立派に2Dアニメが生きていることを体現したスタッフの勝利の叫びがこめられている、そんなエンディングに思えてしまった。

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▲米ディズニーストアで発売されたPVCフィギュアセット。
本作のマーチャンダイズは数えるほどしかなかった。


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ホーム・オン・ザ・レンジ にぎやか農場を救え!

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