
自分にとって、もっとも好きな永島マンガのひとつである『はだしのブン』。昭和46年に少年サンデーに連載された長編で、昭和48年、朝日ソノラマから全2巻の単行本が刊行された。
朝日ソノラマの単行本はどのマンガも折り返しのコピーが素晴らしい。作品の中でも使われるフレーズだが、簡潔な文字数で作品の魅力を伝える一文に思える。
ブンは知ることが好きだった。うれしいとき、悲しいとき、ブンは思いっきり野原を走った。走れ!! 泣くかわりに思いっきり走れ!!――児童漫画への永島慎二の愛情が生み出した、珠玉の名作ついに登場! (1巻より)
(※以下この色の部分はあらすじなので、未読でかつ知りたくない人は飛ばしてください。)
両親がいないブンは片田舎の分教場で育てられる小学生。父親代わりの”ダンゴ先生”と、姉のような優しさで教え子を包む”ねえちゃん先生”、そして兄弟のような同級生たちと日々を過ごしている。
しかし、本校の生徒から分教場の生徒は蔑まれ、いわれのないいじめや嫌がらせを受ける生活が続いている。エスカレートする嫌がらせはいつしか大勢の生徒を巻き込んだ闘争になり、分教場のガキ大将”いっちゃん”は犠牲になってしまう。
みんなを巻き込まないように単身で進み出たいっちゃんを助けるために分教場の仲間は加勢に加わるが、混乱の中いっちゃんは事故で命を落としてしまう。
子供たちのやり切れない思いを発散させるために、運動会を赤組、白組、分教場の組をつくり、ケンカの変わりにスポーツで戦いをさせようとする本校の先生。
いろいろな問題を抱えたまま運動会は開催され、いがみ合っていた子供たちは正面からぶつかるが、その中でいつしか心通わせていく。
生真面目過ぎるかもしれないドラマの熱さ、重さ、この静かなる力みこそ魅力、こういうまっすぐな漫画が大好きな人はきっとこの漫画で何かが変わるだろうし、人を変えるパワーがあって当然とも思える漫画。今からすれば遥かに前の話とは言え、当時でも漫画の良心とも思えるこの作品が掲載される舞台をサンデーに残っていたのかと思うと驚かされる。
分教所の仲間たちのイキイキとした描写は、生きている事を感じさせる魅力にあふれている。
そんな彼らの視点を主軸に描かれている展開は、いわれなき差別に憤りや怒りを自然に感じさせる。共感が伝えるテーマ性は根本的で胸を打つ。
主人公ブンには隠された過去があり、”分教場差別”だけでなく、別の偏見も浴びているキャラクターだという事が後半明かされる。
それを聞かされた本人の反応が素晴らしい。
自分にとり、児童漫画のひとつの理想系を体現した『はだしのブン』はもっと多くの人の目に触れて欲しい作品だ。
復刊ドットコム「はだしのブン」ページ
分教所の仲間たちのイキイキとした描写は、生きている事を感じさせる魅力にあふれている。
そんな彼らの視点を主軸に描かれている展開は、いわれなき差別に憤りや怒りを自然に感じさせる。共感が伝えるテーマ性は根本的で胸を打つ。
主人公ブンには隠された過去があり、”分教場差別”だけでなく、別の偏見も浴びているキャラクターだという事が後半明かされる。
それを聞かされた本人の反応が素晴らしい。
自分にとり、児童漫画のひとつの理想系を体現した『はだしのブン』はもっと多くの人の目に触れて欲しい作品だ。
復刊ドットコム「はだしのブン」ページ